映画感想12:猫の恩返し
●猫の恩返し
監督:森田宏幸 脚本:吉田玲子
原作:柊あおい(バロン 猫の男爵)
主演(声):池脇千鶴、袴田吉彦
2002年 日本
(アニメーション作品)
「耳をすませば」の流れで観てみました。思えば4年前に原作である「バロン 猫の男爵」は読んだのですが、結局映画のほうは観てなかったから…。
これは今になって知ったのですが、この原作を含む「企画」自体が、スタジオジブリに舞い込んだ、あるテーマパーク向けの短編ビデオ製作だったとか。その企画をスタートするにあたって宮崎駿さんが「耳をすませば」に登場した「地球屋」の「猫の男爵(バロン)」と「ムーン(ムタ)」を使った作品にするように、という条件をつけ、更に原作についても「耳をすませば」からジブリと親交のある柊あおいさんにお願いした、ということらしいです。つまりこの作品は映画「耳をすませば」の中から誕生した作品とも言えます。
ただ、上の記載にもあるとおり、この作品には宮崎さんや高畑さんなどは直接関わっていないようです。
さて、実際の作品の感想ですが…。これは1本勝負の劇場用長編に向いていなかったのでは…? などとちょっと思ってしまいました。作品を観終わった後に残るものが、ちょっと少なかったなぁ…というのが正直な感想。
例えばOVAシリーズ(各20分程度で数話に分ける)みたいにして、「猫の事務所」や「バロン」「ムタ」「トト」などのキャラクターをもっと自由に何回もの小さな話で展開できれば、さぞ面白い世界になっただろうなぁ。
特典映像「誕生秘話」で原作者:柊あおいさんが語っているように、これは「耳をすませば」の主人公、月島雫が創った世界でもあるのです。原作が持つものがとても良いだけに単発で終わらせるのはとても惜しいです。
本当ならここでもう一回原作を見直したいところでしたが、先に500冊以上の少女コミックスを売りさばいた際に、それも手放してしまいました。「耳すま」を観た後のいまなら、また違った感慨があると思いますが…。まあ、これも縁ですかね。ちょっと切ないですが…。ここでまた原作本を買い求めることはしないことにします。
下記のリンクにあるとおり、4年前のの自分の感想を信じるなら、原作はとてもよい作品でした。その映像化という意味では成功していると思いますが、原作をよりよいものに昇華させるには至っていないと思いました。
特に、これは脚本なのかもしれませんが、原作には「自分の時間を生きられない者が行く場所」とか「主人公が幼い頃に会った猫」とか、そのあたりでホロリと泣けてくるものがあったはずなのですが、それが上手く映画には出ていないと感じました。
後は、技術的なこと。多くのアニメ作品では、背景と動画の部分の区別がどうしてもついてしまいます(例えば壁の一部が動いたりする場合、動く部分だけ微妙に違う、とか、そういうこと)。それは仕方がないことなんですかね? 「耳をすませば」はどの場面をあら探ししても背景と動画との区別が見えません。それと比較してしまうと、ちょっとなぁ、と思いました。あくまでも「耳すま」と比較したらです。ほとんどのセルアニメーション作品と比べれば、まずまずの出来だとは思いました。
なお、同時公開・収録の「ギブリーズ」はまだ観てません。
あとは最後に言いたいこと…。
「塀の上から簡単に落ちる猫なんて猫じゃない」
猫好きとしてはそんな感じです。
関連過去日記:2002年4月21日(日)
「てけてけマイハート」、「おねがい朝倉さん」、そして、あの「猫の恩返し」原作の感想
(視聴形態:自宅でDVD)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
「猫の恩返し」は残念ながら観ていません。確か、シプリ作品の中では、あまり興行収入がよくなかったような・・・。そのくせ、サウンドトラックにはしっかりと関わっていましたが。
主題歌だけがひとり歩きで大ヒットしてしまいましたね。
つじあやのさんの歌とウクレレで。ちょっとしたウクレレ・ブームが起こりました、音楽的には。
あの作品は成立過程からいろいろとありまして、そういう意味では不幸な作品なのかも知れません。むしろ、おまけであるはずの「ギプリーズ」のほうが評価はよかったような。当時のチャゲアス人気もあったからなのかも知れませんが。
当たったからいい作品だとか、はずしたといってもかならずしも悪い作品だとかとは言いたくはありませんが、この作品に関してはやはり、悪条件が重なりすぎたとしかいいようがありません。当初のようにテーマパークで短編として公開されていたら、作品に関わったスタッフたちの苦労も報われる結果になったろうにと思います。かくいうぼくも、この作品がシプリとの最後のお仕事になりました。
すべてが、今となってはいい想い出ですが。
投稿: maline | 2006年9月16日 (土) 19時18分
…そうですか。malineさんにとってもいろいろと思い出がある作品なんですね。
僕は、2002年あたりではすでに、俗世間の情報を収集する余裕がない状況の中にいましたので、主題歌のヒットも知らなかったのですが、確かに「あ、これは聴いたことある」と思いました。いい曲ですよね。作品と主人公「ハル」のイメージにも合っていると思いました。
僕は記事ではああ書いていますが、全国公開の劇場用、それもジブリの、ということを考えなければ、とても良い作品だと思っています。主人公「ハル」役の池脇千鶴さんの声も、力が抜けたような独特の空気があって好感が持てます。
まあ望みは薄いですが、僕としてはぜひとも「猫の事務所」「バロン」「ムーン」などがもう一度、どこかで活躍してくれることを願っています。
投稿: あゆざかけい | 2006年9月17日 (日) 10時23分