映画感想23:宇宙戦争(1953年版)
●宇宙戦争 (1953年版)
(The War of The Worlds)
監督:バイロン・ハスキン
脚本:バー・リンドン
主演:ジーン・バリー、アン・ロビンソン
レス・トレメイン
1953年 アメリカ
もう50年以上も前の古典SF映画。原作はもっと古い。19世紀だよ。H・G・ウェルズ(Herbert George Wells)の古典SF小説である。1953年は昭和28年。映画製作の時代はもちろん、原作が発表された時代には、コンピュータもカラーTVも無かった。その意味では原作者の想像力は評価されるべきだろう。
この作品を観ると、当時のアメリカにおける宇宙観や核兵器に対する認識がわかる。
この映画から推察するに、当時は太陽系の惑星には金星は含まれていなかったようだ。また、木星型惑星(ガス惑星)に対する正しい認識もほとんどなかったようである。
核爆弾(原子爆弾)の恐ろしさについても実情よりも相当軽く考えられていたようだ。作中では火星から来たと思われるUFOに対して原子爆弾の使用を選択する。さすがに通常兵器とは差別化され、運用にはそれなりの手続きが必要みたいだが、爆心を簡易なゴーグルとマスク(爆発時の閃光および爆風による砂塵防御だろう)のみをして、大勢が爆発を見守るという、いまで考えると考えられない描写もある。当時のアメリカ人にとっては、だから広島や長崎の惨劇は正しく把握されていなかったのだろう。
原作を含め、この映画は後のSF創作に与えた影響は大きいらしい。その意味では貴重な作品。僕が知る作品だと、1983年~1984年にTV放映されたアニメーション作品「銀河漂流バイファム」の中にこの映画が元だと思われる描写がある。「インデペンデンス・デイ」にも多分に影響が見られる。
ただ、やたらと事情に詳しく格好よく頼もしい主人公と、普段は美人で清楚だが非常時には悲鳴をあげてパニックするヒロインが、あまりにも典型的なのが、痛い。まあ古典だからね。
この「宇宙戦争」は題名でかなり損をしている。
原題の「The War of The Worlds」もそうだが、題名から連想される内容と、実際の内容が異なるからだ。「宇宙戦争」と聞くとものすごく大規模で派手な星間戦争を思い浮かべるが、この作品は、静かに人類の醜さと無力、そして地球生命の勝利を淡々と語る奥深いものなのだ。
僕は、この作品を観て、改めて2005年版の「宇宙戦争」(スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ、ダコタ・ファニング主演)の評価が高まった。2005年版はかなり1953年版を大切に扱っている。随所に旧作に通ずる描写がある。前述のように題名から連想されるような戦争映画ではないが、それを踏まえて観ると「2005年版は傑作」と言って良いだろう。
1953年版については古典としての価値だけだなー。僕としては(^^;)。もちろん、原作を含め、いわゆるSF映画としては多分最古級であり、その意味では極めて重要な意味を持っていることは認識できる。SF映画をマニアックに語る材料にはなるだろう。
この作品の存在を教えてくださったmalineさん、どうもありがとうございました。懲りずにまたご教示いただけますと幸いです。m(_ _)m
(視聴形態:自宅でDVD)
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コメント
とうとう観ましたか。
いい悪いは別としてこんな映画を50年代は作っていたのだよ、ということで。円盤が不気味だと思いませんでした。なんかそれ自体が生物というか。キリンの首のようなスキャナで辺りを嘗め回すように見つめ、抵抗するものをレーザーで焼き尽くす。あのいやらしい動きがね、止められないんですよ。くせになってね。そうかと思えば、水爆を食らっていながらも無傷でキノコ雲の中から平然と姿を現わすという。あの円盤がこの作品のすべてを語ってしまっているんですよ。『ゴジラ』的大破壊はもう滅びの美学すら感じてしまいそうです。
神父が言います「彼等が我々より進化しているなら、より神にちかいはずだ」と。ぼくはノーと言いたいですね。人間より進化しているなら、より悪魔にちかいはずです。あの円盤は悪魔以外の何物でもないですから。
これに懲りずいろんな作品に巡り合ってくださいね。
投稿: maline | 2006年11月15日 (水) 19時05分
こんばんは
50年も前の映画が観られるなんてびっくり。
作品を作り上げるっていうことの重みを感じたわ。
日本のロボット技術が兵器に使われず、介護や平和への利用に向かっているのは「ドラえもん」の影響があると以前聞いたことがあります。
できるなら後世にいい影響を与える作品がこれからも増えていってほしいですね。
投稿: とまと | 2006年11月16日 (木) 00時35分
宇宙戦争・・・コップの嵐?心の嵐。西部劇のような感じ?日本でいうところの水戸の黄門様。見えないようで見えてくる・・・。見てない以上想像力を働かせる。なんでしたっけ、
HGウェルズでしたっけ現在を非常に風刺した作品があるとかないとか・・・。記憶が飛んでいるから思い出したら。
投稿: たかでん | 2006年11月16日 (木) 21時36分