医療不信もしくは医療費不信な僕
僕はいま最も多くかかっている精神科のほかにも、昔から医者にかかっている。そのひとつは眼科。これはほとんど生まれつき目が悪いので、これこそ一生お世話になる科目だろう。もう十二年くらい前、東京では眼科で有名な病院で、たまたま網膜に穴が開いているのが見つかった。医師はレーザー処置を勧めた。言われるがままにレーザーの申し込みをするも、病院はこっち(その頃は社会人2年目でいまの部署に異動してすぐのときだった)の都合はお構いなしに日付と時間を指定する。それでも患者としては言われるがままに従った。そしてレーザー処置。強い光の中という意味では眼底検査と似ているが、レーザーで焼かれるというのはとても怖いことだった。そのレーザーを勧めた医師もレーザー処置を実際に行ったのも同じ医師だ。あまり手馴れた印象ではなかった。僕を使って臨床試験をしているのかとさえ思った。その後、目の奥に鈍い痛みを感じた。医師に訴えてもつれない返事ばかりだった。そして、その医師はすぐにその病院からは姿を消していた。鈍い痛みはその後何年も続いた。その病院では当時、医師のことを「先生」と呼び、患者に対するお知らせの中でも「先生」であった。病院では先生が一番えらく、患者は二の次。そう感じて以来、僕はかなり医師もしくは病院組織について疑り深い人間になった。
一方で僕が住まうマンションの敷地内に、祝日や日曜でも開院しているクリニックがある。それはそれで住民としては何かと便利だと思ったものだが、数年前に、そのクリニックがマンションの管理組合にとある要望を出したことがあり、もめたことがあった。その要望の内容がとても利己的に思えたこと。そして当時、そのクリニックの外で堂々とタバコをふかしている医師がいたこと。そんなこともあり僕はそのクリニックが嫌いになった。(ちなみにそのタバコをふかす医師はいまはもう居ない)
その後、風邪などで内科にかかる必要があるときも、そのクリニックを避けるなどということをしてきたが、近所にはろくな医者がいないことがわかった。相対評価で言えば、マンション敷地内のクリニックはなかなか良好な医院だったのだ。なんでも院長はよく話を聞いてくれると評判のようだった。僕の両親もよくそこに世話になっている。
今日の午前中、僕はちょっと気になることがあって受診した。右の脇腹下部の背中近くが、ここのところずっと痛い。位置的には盲腸かとも思えた。職場復帰してまた別の病気だということになったらたまらない。とにかく医師に診てもらうか、ということになった。
朝早く開院前に行くと、毎日のように受診に来ているおばあちゃんの常連たちがべちゃべちゃしゃべっていた。とても元気そうに見える彼女たちは何故毎日のようにクリニックに通うのだろうか。病は確かに見た目ではわからない。それは充分に承知しているが、それでも、いくらなんでも毎日受診する必要はない気がする。彼女たちのような存在が、医療費の高騰の原因になっていると思うと複雑である。
クリニックの事務の女性ともすっかり顔なじみなのだろう。事務の女性は明らかに20歳代と若いのだが、おばあちゃんたちとは完全にお友達言葉である。おばあちゃんのひとりが「今日は院長先生は来るの?」と訊くと、「あたしも昨日来てないからぁー、わかんないのー」 その事務の方は本当はかなり優秀なのかもしれない。でも、今日どの医師がいるか不明というのは、個人というより体制としてどうかと思った。僕が数ヶ月前に通った歯科医院は、毎朝朝礼をやっていた。そういうことはどの医療組織でも必要だろうと思った。
その事務の方に保険証などを提出すると、「今日はどうされましたか?」と訊かれる。「このあたりが痛いんです」と示すと、「整形(外科)は今日はお休みですよ?」と顔をしかめられる。「いや、でも内科で診てもらいたいんです」というと、「内科でいいんですか?」 …それがわからないから診てもらおうと言っているのに!
やがて開院時間ギリギリになってぞろぞろと医師や技師や看護婦たちが入ってくる。みんな常連のおばあちゃんたちに笑顔で挨拶する。確かにクリニックにとってはいいお客さまだろう。……でもやっぱり、もうちょっと早く来て、5分でいいから朝礼みたいなことをした方がいいのではないかと思う。
そんなこんなで、近所では良い評判の院長先生のところに通される。事前に書いた問診票には、「精神科も受診している」ことも記した。話をよく聞いてくれると評判の院長先生はしかし、僕の話はあまり詳しく聞いてくれなかった。もっともこれは単なる僕の主観に過ぎない。僕は最近、とても話すのが下手になったから…。院長先生は「とりあえずレントゲンとらせてください。あと尿と血液もとらせてください」
レントゲンが終わって再び呼ばれる。院長先生は写真を見ながら一人で納得したように頷く。「腸にガスや便がたまっています。向精神薬などを飲むと、腸の働きが悪くなるんですよ」 腸の働きが悪いのはいまに始まったことではない。それこそ子供のころから悪い。精神科処方のクスリを飲んでから特に変化は感じなかった。それを伝えようとするが、「でも実際に悪いですから」 …精神科のことは言わないほうが良かったのか?
それから尿と血を採取される。採血の途中なのに、会計からは先ほどの事務の女性が僕の名を呼んだりしていた。行くと自己負担額は5千円弱。改めて医療費自己負担3割負担はひどい話だと思った。
僕の被害妄想だといわれればそれまで。神経質なだけだといわれればそれまで。いや、たぶんそうなのだろう…。僕の話し方がまずいのかもしれない。今日の医師は客観的に観ればきわめてノーマルな対応だったのかもしれない。でもなー。どうにも、信じたいけど信じられない。それがいまの医療機関・医療組織なんだよね。
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コメント
お医者様と患者は信頼関係だと思うのですね。
メンタルのお医者様は信頼関係がなければまったく治療行為にならないのは言うまでもないのですが、フィジカルのお医者様もそうだと思うのです。
病は気から、と言いますから、信頼して治療を受けて、投薬されると自然と治りが早いと思います。逆に不信状態だと治療が逆効果になりかねない。(私も糖尿のお医者様で、なにかというと「入院しなきゃ」「インシュリン撃ちますよ?」と脅すお医者さんにあたって、2回目でお医者さん変えました。)
たとえ神経質であったにせよ、自分がそう感じている、てことは病にとって重要ですから、お医者さん変えてみることをおすすめします。
信頼できない医者は、自分にとっては藪医者と同じですから。
投稿: くりにゃー | 2006年11月 3日 (金) 17時57分
信頼こそ第一の治療、私もくりにゃーさんと同じように思います。
自身はいい医師にめぐり合えていますが、
子どもたちのかかりつけはあれこれ変えましたよ。
で、兄弟でも別々の小児科
常連さん方、多いですよね。
以前、足の小指の爪をはがして痛くて病院へ
その時に、常連さんでイスがいっぱいで「あんた、若いんだから立ってくれる?」って後から来た常連ばあちゃんに立たされたこともあったわ。待ち合いで姿を見かけないから『具合悪いのかしら?』という会話はやめてほしいよね~
投稿: とまと | 2006年11月 3日 (金) 20時04分
あゆざかさん、こんばんは(^^)
医者は信頼できる先生が一番です。
今、事故の関係で通っているクリニックの先生は、今まで出会ったことのない位、医療に対して責任と誇りを持って治療にあたってくださる先生です。他がなんと言おうが、自分が正しいと思えないことには、絶対に首を縦に振りません。ある意味ものすごい頑固です。
例えば保険会社や警察に提出する診断書。大病院や面倒と思う先生は、簡単に全治○ヶ月の○に数字を書き入れるのですが、今の先生は『入れられないものは入れられない』と、頑として数字を入れようとしません。おかげで警察の担当者が事後処理ができずに困ってます(笑)。でもそれが本来の医者のあり方だと思いました。そんな風に思わせてくださった先生は、この先生が初めてでしたね。このクリニックは内科・外科・整形外科が専門なのですが、精神科や心療内科があったら迷わず通っていたと思います。おまけに笑い声の絶えないホントに変な病院なんです(笑)。うちの主人はこの先生以外の医者にかかるのは嫌だとまで言っています。
正直、今通っている精神科の先生やスタッフさんたちよりも、ここのクリニックの先生やスタッフさんに助けられてうつ病の症状が軽くなってる気さえしています。『病は気から』というのは、そうやって支えるすべてが因果関係になっているんでしょうね・・・。
長々と失礼しました。またお邪魔します。では。
投稿: かな | 2006年11月 3日 (金) 21時54分
あゆざかけいさんこんばんわ。お医者さんにはいろいろな方がいますよ。ちなみに東京のチベットはお医者さんが少ないです。そんなことはさておきおばあちゃんたちは病院しか行き場がないんですね。若い頃仕事ばかりしてきてか特段趣味をもっていないのでしょうか。病院に行くしか仲間がいないのは寂しい現実ですね。お医者さんは選ぶしかありません。大学病院は治療より治験が多いそうですし。3割負担しているからお医者さんは選びましょうか。ちなみに東京都では精神科関連の治療では申請すれば補助が出ます。(私は転職の時見られるのがいやなのでしていませんが)・・・ご存じだと思いますので複数医者に掛かっていらっしゃるのでしたら検討に入れればいいのでは。(長くなりすいません)
投稿: たかでん | 2006年11月 4日 (土) 02時13分
くりにゃーさん
とまとさん
かなさん
たかでんさん
コメントありがとうございます。
皆さんが仰っている「病は気から」が、その言葉の本来の使い方なのでしょう。世の中にはこの言葉を日本的根性論に結びつける人が多いので困ったものでありますが……。
僕の方も必要以上に医者に対して疑り深いところがあるので、もうちょっと心を開くことも必要なのかな? とこの記事を書いたり、皆様のコメントを読んで思いました。
投稿: あゆざかけい | 2006年11月 4日 (土) 20時16分
お久し振りです。憂も口下手です、お医者さんに遠慮して、混んでるのにあんまり長々しゃべったら悪いかな・・と思っちゃう。そんな必要ないのにね、本当は。
憂は、初めての結石で、内科の先生に右の横っ腹が痛いと訴えたら、やっぱり「便がたまってます」って下剤出されました。でも、良くならなくて、勇気を持って「先生、石じゃないですかねぇ、母もそうだったので」と言ったら、やっと泌尿器科へ通されて、石を発見。でも、対応が遅いから治療を受ける前に、石は自然に出てしまいました。出るまでが苦しいのに・・・。そんな事があると、もう、絶対行きたくなくなっちゃいます、そこの病院。
今は、信頼できる病院がいくつかできたので、いいですが。あ、でも、皮膚科は信頼できるとこがまだないです・・・。蕁麻疹もほったらかしです。
投稿: 宇都宮憂 | 2006年11月 5日 (日) 10時45分
お返事が遅くなりました。
憂さん貴重な体験をご教示してくれてありがとう。そういうこともあるんですねー。僕も症状が改善されないようなら違う医者に行ったりしてみます。
この前TVで言っていました。大きな病院(特に大学病院)は行くものじゃないって。「医療」「研究」「教育」の3つをやっているので、「医療」には3分の1のパワーしかさいてない。そう聞くと何だか納得ですね。
信頼できる「主治医」にめぐりあいたいですね。
投稿: 憂さんへ | 2006年11月 6日 (月) 17時50分