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2006年11月11日 (土)

活動記録 冷たい雨の通院日 振れる心 仮面を外す心

 僕はもともと気分は平均的に沈みがちである。気分が良いときはめったになく普通に良いといえる状態はたいていニュートラルである。ここ最近で気分が本当にハイテンションになったのは、もう1年も前だ。

 昨年のちょうど今頃だったと思う。一年目の新人と組んで行ったデータ移行処理があった。業後から深夜にかけて実施した。僕の中では「この件名(一連の受託作業のひとまとまりをこう呼ぶ)だけは完全に成功裏に終わらせたい」と思っていた。それがもくろみどおりうまくいった翌日だった。この日は本当に珍しく会社で浮かれた気分で居たのをよく覚えている。普段は職場の空気を読んで忙しい者や緊迫している人の邪魔にならないようにしていたが、その日だけは忙しい後輩を冗談で邪魔してしまったことを覚えている。
 僕にとっては特に珍しくも無い件名のひとつであったが、新人である彼女にとっては「はじめての仕事」である。「会社に入ってからの」であると同時に「社会人になってからの」という前置きがつく。とにかく初仕事は成功してほしかった。基本的に仕事は辛いが、それでもそれを「成功」させることが、自信につながる。小さくても「成功体験」を繰り返すことが人を伸ばすし強くする。無論「失敗体験」もとても重要だが、少なくとも最初は「成功体験」が絶対に良いはずである。
 そう思いつめていた僕にとって、その日は本当にほっとした日だった。それまでものすごく圧力がかかっていたことに気付いた日でもあった。

 ほっとしたという意味では、今年の年始休日に行った他部門システムに絡む移行処理も同様だった。それは重要度で言えば、先の新人と一緒にやった仕事よりもはるかに、会社として失敗が許されないという意味で重要だった。しかし失敗したとしても叱責を受けるのは基本的には僕だけだった。また、成功させたとしても誰が褒めてくれるわけでもない。出来て当たり前という感じだった。

 ……。

 話が逸れた。
 とにかく僕はだいたいにおいて気分は良くてニュートラルなのである。昨日はその意味ではかなりニュートラルであった。つまり僕の平均的気分偏差の中では上々だったわけである。
 その反動か。今日は気分が乱高下した。
 天気は最悪だった。雷雨は降る。風は冷たい。
 今日は精神科の通院日だった。
 朝から身体が重い。
 それでも混んでいるだろうと予想しつつクリニックへ行くと、いつも以上に混んでいる。先週の土曜日は担当医は休みだったためだ。
 午後からにしてもらい、クリニックをいったん後にする。帰りがけにTSUTAYAによって先週借りたDVDを返却する。と同時に2作品ほど借りる。昨日からこの土日に何か観ようと思っていたのだ。
 気分的にSF作品が観たかった。それも古いものが観たかった。「スタートレック」の最も古い劇場版と、「宇宙戦争」の旧作(1953年版)にした。

 ……。

 家に帰って昼食を摂って、再びクリニックへ。
 医師の問診には基本的に昨日、産業医に話したことと同じようなことを言った。
 診察といいながらも精神科における診察は問診のみである(この事実が精神疾病への偏見を助長していることは否めない)。
 これは知らない人も多いと思うので少し解説すると、精神科医とカウンセラーは同義ではない。違うものである。良い医師は問診時にカウンセリングに近いことをしてくれるが、基本的には別物なのである。これは僕も病気になってはじめて知った。
 僕の主治医は決して悪い医師ではないが、良くも悪くも一人当たりに診察する患者が多すぎる。たいていは数時間待って数分の問診で終わる。それでも患者はクスリが欲しいこともあり、問診を受ける。

 主治医は産業医がどう言っているか、産業医は主治医がどう言っているかを僕に聞くのだ。そうなると患者としてはある程度自分で決めざるを得なくなる。「自分で決める」部分の調子が悪いのに、である。このことが精神疾病の慢性化を助長していると個人的には思う。

 ……。

 また話が逸れた。
 帰ってきたらもう夕方である。
 僕はまず借りてきたDVDを観ることにした。「スタートレック」の方であるのだが、これは以前、多分学生時代くらいに観たことがある。
 いつもであればそれなりに楽しんでDVDを観賞するのだが、今日はそうではなかった。劇中で主人公のカーク提督(艦長)は副長と意見対立をする。そのシーンを観て、僕の心の中でも対立が起きた。

 自分が昨日行った、勇気が必要となる行動についてであった。カークは「前進せよ」と言うが副長は「無謀です」と言う。急速に僕の心の中に昨日の行動が「無謀である」という考えが広がった。観ていられなくなり、途中で床に入った。

 勇気が必要となる行動とは、一言で言うと「仮面」を外す行動だった。去る水曜日に投稿した記事を書いたことの影響もあったかもしれなかった。
 僕はいくつもの「仮面」を被ったまま生きることに疲れたのだ。

 ……。

 生きることを辞める選択肢は数ヶ月前にすでに捨てたつもりだ。しかし会社など、自分をとりまく社会から自ら離れる選択肢は、実はまだ残っている。
 無論、選択肢というだけで、それを選ぶか否かは、また別の話である。

 また、自分の心の置き所も未だに定まらない。会社や仕事ではないことは確かだ。もしもそうなれば、僕はおそらくまた壊れる。

 ある友人(であると僕は思っている…もしくは思いたいと願っている)はこう問うた。「自分のことが好きですか」
 僕は考えたけれど、答えが浮かんでこない。
 そんなに嫌いじゃない。と言う自分が居る一方で、更なる高みから鳥瞰する目が、僕にこう言う。「独りよがりで何やってんだ」

 ……。

 今日は映画感想は書けないようだ。また後日にしよう。

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コメント

こんばんわ。
いや~、だいぶ、「寒い日」が来ましたね。
ここ岐阜は、「雨時々曇り(殆ど、小雨)」でした。
あ、そうそう。
あゆざかけいさん、この時期、そろそろ「風邪」が来るので、気を付けましょう!!。
体調管理に十分、注意しましょう。

投稿: H・K | 2006年11月11日 (土) 23時06分

えー、長文コメントで、一部から不評を買っています、くりにゃーでございます。(と最初に逃げを打っておくのは卑怯か?)

成功体験、は大切です。新人さんにとって、仕事が楽しい!と思わせるのは、仕事に成功して誉めてもらうときです。それが何より大切です。仕事が楽しい、と思わないと、長続きしません。良い先輩ですね、あゆざかさん。
で、この「成功体験」は、挫折してしまった私たち障碍者にも必要なことです。(っていうか、仕事からうつに堕ちた人たちは、たぶん、途方もない「失敗体験」(だと自分で思いこんでしまっている)をしていると思います。自分の能力が足りない、と思う事象があったはずです。それを回復・克服するには「成功体験」を積んでいって、「俺ってできるじゃん」と思いこむことが必要なんだと思います。(って、落伍状態の私の言うセリフではないんだが、私も成功体験が欲しいよ……。))
あゆざかさんが、これからの職場復帰の中で、成功体験を積まれていきますよう、お祈りいたします。

気象は、気分障碍者には影響が出るようですね。健常者でも、雨降りはゆーうつなものです。ましてや、すぐ堕ちやすい私たちでは、言わずもがなです。雨が降っていても、その先に楽しいことが待っていればなんとか動けるのですが、何もないと寝ちゃいますねー。(頭は行きたがっていても、心や体が反抗してどこか痛くなったり、動けないように不調になったりすることもあります。)
そんななかでも、ちゃんとお医者様に行けたのですから、自分で自信を持っていいですよ。

(カウンセラーと精神科医の違いについての私感。
精神科医は、病状の状態を確認するために問診をしているはず。カウンセリングのような傾聴を行ったとしても、それは病状のモニターのためのもので、カウンセラーが行う「共感」は行わないと思う。
カウンセラーは「傾聴」とともに「共感」をして、クライエントが自分のことを受け入れるように促す(カウンセラーがクライエントの言っていることを受け入れることで、クライエント自身が自分の言っている・やっていることは正しいんだ、と自信を持たせる)ことを目的にしていると思います。)

仮面は生きていく上では必要だと考えています。舞台の上で見えない仮面をかぶる……のはマヤか。そういう意味じゃなくて、TPOに応じて、自分の見せ方を使い分けないと、現実社会では、いじめられることが多すぎて、生きていけない。
ただ、疲れちゃうんですよね。unifiedな生き方が一番ラクです。そういう自分を受け入れてくれる社会をみつけられれば一番いいんですが、今の日本じゃ、うーん。山奥で炭焼きでもするしか unified な生き方はできないかもしれない。
ま、仮面の数を減らすことはできるかもしれませんから、次第にみんなに自分の真の顔を見せるのはいいのかもしれません。(少なくとも、このブログでは、あゆざかさん、素の顔でしょ?)
(ただ、私は、もし入った会社で、自分の巣の顔をさらけだすのは、とても怖いです。私ってヲタクの変態だから(^_^))

投稿: くりにゃー | 2006年11月12日 (日) 05時38分

あゆざかけいさんおはようございます。あゆざかさんを見ていると私よりも遙かにテンションhighです。ブログ見ていると無理してないかなちょっと心配になります。ストレスは常に高いでしょうけど無理せず楽しんでくださいm(_ _)m。

投稿: たかでん | 2006年11月12日 (日) 09時59分

お返事です

>H・Kさん どうもです
 風邪は本当に気をつけないといけませんね。実は今日は朝からのどの調子が悪いんですよ。今日は早めに休もうと思います。……だいたいいまの僕には「休暇」など残っていませんから、そうやすやすと休めません(^^;)

>くりにゃーさん いつもありがとうございます
 長文という意味なら僕もよく記事より長いコメント残したりしていますから(^^;)気にしないです。…というかうれしいですよ。カウンセラーの「共感」部分については仰るとおりですね。僕は「本物の」(?)カウンセラーにカウンセリングしてもらったことはないですが。
 「仮面」はですね。僕も社会で生きていくには必要とわかっているのですが、その「仮面」を維持するためにものすごい精神力を使っている気がするんですよね。
 でもだからといって「仮面」を全くなくして素の自分だけでは、少なくともいまの日本社会ではとても生き辛い。いろんな意味で僕はマイノリティで、そのままだと社会不適合者の烙印を押されます。もう押されてるかもしれませんが……。どのくらいの「自分」を保つかは未だによくわかりません。

>たかでんさん いらっしゃいませ
 そう見えますか(^^;) まあある程度のテンションがないと記事さえ書けないですけど。僕としては上に書いたとおりの認識なのです。
 ブログではあまり無理はしていません。どちらかというと、こっちが素ですから。

またお越しください。

投稿: あゆざかけい | 2006年11月12日 (日) 14時47分

こんばんは
やっと土日が終わりました(バス停に送って帰ってくると11時を過ぎています)。
復帰のペースはとんとん拍子だけど、"出社することが仕事"というのも思いやりに欠けてるなぁ、なんて思いました。
午前勤務でもいい、3時まで勤務でもいいから達成感があってから次のステップを踏ませてほしいのにな、というのが私の感想であり、希望です。
自分嫌いは結構根深いものがあるの。だから他者からの好意も安心して受け入れられない(というかそういう感情があるのかすらわからない)すっぽり抜け落ちた感情なんだよね。主人は…なんだろうねぇ、先生も彼がバランスをとってくれているから何とかなっているっていうから懐の大きさから人生をともにさせてもらってる感じかな。
”自分で決めなさい”は私もよく言われます。
今回は失敗っぽかったけど。。。
また違う視点をもらえるかな。

投稿: とまと | 2006年11月13日 (月) 00時12分

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