NHKクローズアップ現代「急増する働き盛りの“うつ病”」を観て
NHKクローズアップ現代「急増する働き盛りの“うつ病”」
番組進行 :国谷裕子キャスター
スタジオゲスト:森 晃爾さん
放送日時 :2006年11月30日 19:30-19:56
一言でいうなら、うつ病それ自体については深く言及せず、「ここ数年で職場環境が激変している」ことや、「30歳代のメンタル患者が急増している」ことを、前面に出した内容でした。
賛否両論あるかとは思いますが、僕はそれでよかったと思います。30分弱という限られた時間の中で、「うつ病とは」とか「うつ病になる人の特徴は」などということを取り上げていては中途半端になることは必至です。中途半端な報道ほど迷惑なことはありません。却って偏見を助長するだけです。
確かに、いま現在すでに偏見を持っている人に対するメッセージは少ない内容でした。しかし、うつ病などのメンタル疾病と診断されている人も、そこまでは行っていないけれど、もう疲れ果ててギリギリだという人も、同じような重さで扱う内容であったことは、評価できると思いました。
それにしてもすごいと思ったのは、顔を隠さずに登場した営業職の男性の方です。10ヶ月休職して、段階的な復職支援があったにせよ、元の職場・仕事に完全復帰したというのは、たいしたものだと思いました。いろんな人と接する営業職ですからね。
僕などは顧客や協力会社の方に電話をすることに未だに抵抗を感じているというのに。
登場する企業が大企業だけだったという点については、仕方がないのかな、と思いました。女性の人事部長がコメントをしていた東京都港区にある情報システム会社は、社名は直接出ませんでしたが、僕にはわかりました。この業界では大手で東証一部上場企業です。ここはメンタルヘルス対策が進んでいる企業として紹介されました。実際には多くの企業ではこの会社よりも遅れているのが現状なのでしょう。
人事部長という要職に女性が登用されている点も進んでいました。こういうポストには女性の細やかな感性が必要だろうと思いました。
気になった点は、「職場のコミュニケーションが減少している」という問題点をゲストに問いかける時に、「飲む機会が減っている」という表現を国谷裕子キャスターが使ったことでした。僕としては「コミュニケーション」=「飲み会」という発想は受け入れがたいものです。一般論としては確かに、飲み会が多い職場は活気があって健康的なのは事実ですけれど、人によっては却って気疲れし、ストレスにしかならない場合があります。何でも業後に「飲み会」で解決するという風習は悪しき風習であると僕は思います。
番組の最後にゲストの森さんが、「この問題は個人の病気の問題ではなく、企業経営の問題である」という趣旨のことを断言していたことが印象に残りました。いますでにメンタル患者となっている人も、そうではない人も含めて、従業員全員が働きやすいと感じる環境こそが、企業の生産性につながっていくということです。その通りだと思いました。
また、「管理職の機能を高める必要がある」とも言っていました。これも同意ですが、そもそも何故いまの管理職が機能していないかという問題には、従来型の昇進システムで「名誉職」的に役職を与えられた、主として部長クラスの存在が大きいと考えます。部長クラスが部長としての機能を発揮しなければ、課長クラスがそれを補完する方に力を注ぎ、部下の管理などはできなくなります。あまり世代論は言いたくありませんが、いわゆる団塊世代の責任は大きいと、個人的には思っています。(どうしても団塊世代を「勝ち逃げ世代」という偏った目で見てしまう傾向が僕にはあるようです。いけないとは思うのですが、なかなか止められません)
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コメント
観ました。書くと長くなるけど、いいかなぁ。。。
30代は冒頭にも取り上げられたように損な世代なんです。
前半・後半で採用基準も変わり、上の世代は逃げ切れそう、下の世代は覚悟を決めて自分のためなら転職も厭わない覚悟がある。
30代はそんな心の準備も何もなく、入った途端に「終身雇用?そんな保障はないよ」って感じも目の当たりにして…
人員削減と成果主義、そしてコミュニケーションの不足、私には全部連動して見えたから角度を変えたようなつなぎ方はちょっとな、といった印象。
経営効率を上げるために人員削減をし、成果主義によって表面的に無駄を省く(ムチだけになりかねないと思うんだ、アメの部分がないとがんばろうっていう気になりにくいよね)。それによって1人あたりの仕事量が増えて時間がないからコミュニケーションの時間が削られる。別にコミュニケーションって時間を割いてわざわざするものではないと思う。仕事中で数秒のやり取りでも取れるもの。そういった数秒の余裕もなくなっている点が問題なのかな。(と専業主婦は思う)。
理解ない職場についても一応は取り上げていましたね。退職勧奨をされた人への相談窓口など。
最後に、労働者の健康=経営の一部という印象が否めなかった。医療費の支出を抑えるために、予防に重点を置く、それとつながるような感想をもちました。
投稿: とまと | 2006年12月 1日 (金) 00時32分