書籍感想:中学生からの作文技術 (本多勝一)
以前の記事でも取り上げましたが、ここに改めて紹介します。僕としては珍しく、他の人にもお勧めしたい、読んでもらいたいと思った普遍的な良書です。
●中学生からの作文技術
著者:本多勝一
出版社:朝日新聞社 朝日選書
初版:2004年
中学生からの、という題名になっているように、とても簡潔な文章で書かれています。この本を読みこなすには、決して高度な日本語力は必要ないと僕は思います。しかしこの本の内容をすんなりと理解し実践「できている」中学生は、残念ながら少ないでしょう。これは著者も本の中で訴えていることですが、例えばテン(、)のうちかたなど、作文における基本的なことを現代の小中学校では教えていません。高校でも教わらなかったと僕は記憶しています。母国語ではない「英語」についてはピリオドやカンマのうちかたを中学校で教えているのにです。
学校で教わらないのですから、大人になっても知らないままでいることになります。この本を読むと、「文章はセンスだ」という通念を簡単に信じてしまうことも、実は「日本語の作文」についてしっかりと体系的な教育を受けていないためであると気付きます。
この本は、話し言葉ではない、書き言葉として、正確で誤解が生まれない、わかりやすい日本語の文を作るための「技術」を解説しています。きわめて工学的で論理的です。だからわかりやすく、納得性が高くなります。
いまの仕事の好き嫌いは別問題にして、僕が社会に出て痛感したことは、あらゆる学習分野の中で最も普遍的で重要な分野は「日本語」だということでした。それも、話し言葉ではなく書き言葉としての「日本語」です。日本語の文字だけで情報がやり取りされる場面がいかに多いか、想像すればわかります。
かつての僕は、日本語力が高い人は大学で国文学などを専攻した人だと思っていました。でも、芸術的な文章を読み解くことと、普遍的にわかりやすい文章を作り出すことは、必ずしも同じではないのですね。この本を読むとそれがわかります。
久々に良い実用書に出会ったと思います。
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コメント
こんばんわ。
「作文」ですか。
自分は、「小学時代」は、割と「スラスラ」書けました。
けど、「中学・高校」と、「読書感想文」が、主に、書くことに悩まされましたね。
それに、「作文」って、ただ単に、「書くこと」だけでなく、「内容」が重視ですからね。
難しい物ですね。
投稿: H・K | 2006年12月 3日 (日) 19時24分
お久しぶりです。
私は作文や論文は得意分野ですが、本多勝一が好きなので、あゆざかけいさんの紹介文を見て、読んでみたくなりました。明日本屋で探してみます。(^^)
投稿: まりも | 2006年12月 3日 (日) 22時46分
けいさん、この本が読めるとは頭の中がクリアで調子がいいのかな?
私はこれは調子がよくないと手ごわいな、って感じでのんびり読んでいます。
投稿: とまと | 2006年12月 4日 (月) 00時56分