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2010年6月14日 (月)

映画感想46:RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

●RAILWAYS
 49歳で電車の運転士になった男の物語

 監督:錦織良成、製作総指揮:阿部秀司、
 脚本:錦織良成、ブラジリィー・アン、
    小林弘利
 音楽:吉村龍太
 主演:中井貴一、高島礼子、本仮屋ユイカ、
    三浦貴大、奈良岡朋子
 2010年 日本

 まず率直な印象から。
 島根県に実在するローカル電車と、その周りの美しい自然や、のどかな田舎の風景。それらをとても美しい映像として残した作品であり、その『映像美』を大きなスクリーンで観る価値はあったと思います。

 観る価値のある良作であることは間違いなく、映像美だけでも高い評価を得られる作品だと思います。

 しかし、名作、傑作とか、そういう分類にするのには、ちょっと違うかとも思いました。実際に感動もしましたし、泣ける部分もあったのですが、題材やストーリーが、あまりにも、観る者が背負っている社会的な背景や現実問題と、照らし合わせることが出来てしまう作品でもあったため、素直に『すばらしい!』とも言えない部分も出てきてしまうのです。

 ストーリーは詳しくは割愛します。まあタイトルから連想されるものと大きく外れてはいません。『49歳で電車の運転士になった男の物語』です。もっとも物語というには時間の関係もあり、ドロドロしたものはかなり大胆に省かれていて、ストーリーの全体としては、フラットなものとなっています。また、電車の運転士ということに固執した物語でもなく、別の職業に置き換えても成立するようなストーリーとなっています。どちらかというと家族ドラマの側面もあります。
 中井貴一が演じる主人公は、大手電気メーカーの本社の室長という地位にあって、会社の専務から『リストラ事業をやって見せてくれ。その暁にはお前を取締役に推挙するからな』と言われています。数万人規模の大企業の中で、TOP100以内のエリートだといえます。その彼が、同期生が工場長を務めている工場をリストラとして閉鎖することになり、その同期生の助けもあって成功するのですが、その工場長は病気の息子を残して事故で他界してしまいます。そのようなこと等があって、自分自身をもリストラして、田舎の鉄道会社に転職を試みます。

 率直に思ったのは、主人公が転職を決断するまでの過程が、けっこう急で強引に見えました。主人公が本社のエリートではなく、閉鎖される工場長だった方が、ストーリー的には自然ではないかと思えました。もっとも、製作側は、敢えてそれをしなかったのかもしれませんが…。
 また、本仮屋ユイカが演じる主人公の娘(ちょうど大学3年~4年で、就職活動で迷っている)の言動には、少々腹が立ちました。会社ばかりで家庭を顧みない父や、専業主婦から長年の夢だったショップの起業に成功した母を、批判的に見ているのですが、『おいおい、確かに家庭を顧みない父なんだろうけれど、お前はその父や母のおかげで大学も通っているし生活もしてきたんだから、全否定するのはおかしいだろう』と思いました。

■好きなことを仕事にしたり、楽しんで仕事をして、良いのですか?
 僕は世の中から、『誰もが好きな仕事に就ける訳はないし、仕事なんだから嫌なこともしないといけない』と教わってきました。洗脳されてきたと言っても良いでしょう。

■また、終身雇用等が保証されない世の中になって、生き残って行くためには、嫌でも『会社人間』にならないといけない事情があるのに、それを否定してしまって良いのですか?

 このようなことが、この映画を観る上でのポイントなのかなぁ…と思いました。

 この映画では、ギリギリのところで、上記の2点目である『現実』を、否定まではしていません(肯定もしていませんが)。もし全否定するような内容であれば、感動するどころではなく、白けてしまうでしょう。
 今2010年、世情としては極端に就職状況が悪化しています。そういう現実を踏まえると、この映画も違った風に観えるのではないでしょうか。素直に『すばらしい映画だ』とは言えない現実もある気がしてなりません。

 まあ今の僕自身、今の職業についてだって、納得できているかというと、決してそんなことはありません。だからこそ、この映画について考えると、様々な思いが去来して、なかなかまとまりません。
 職業って、人間活動の基本的な部分に関わることなので、本当に複雑な思いです。

 いろいろ言っていますが、この映画のキャストは、ほぼベストマッチだったと思います。運転士がとてもよく似合う中井さんもそうですし、何よりも、高島礼子さんが演じる主人公の妻のキャラクターと言動がとても良かったです。彼女のキャラクターが失敗していたら、この映画は悲惨なものとなっていたでしょう。それくらい重要なキャラクターです。

 冒頭にも言いましたが、とても美しい映像です。それだけでも観る価値があります。


 好きなことを仕事にできる社会。もしくは、仕事がもっとシェアできて個々の負担を軽減できる社会。そんな社会があると良いと思います。個人的には。今の日本は、それとは真逆を進んでいます。


(視聴形態:劇場で)

参考:あゆざかけい映画勝手にランキング

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コメント

おはようございます。

大切な二点の事柄ですね。仰る通りです。
仕事は社会との関わり方の方法なのでしょう。専業主婦も、経営者も、無職も関わり方のひとつ。自身の関わり方と矛盾する行動や言動をすると、おいおい違うだろ、となってしまいますね…。

仕事ひとつとっても、組織人としての報酬と契約についての考え方と、ショップを営む事業主の職業意識とではかなり違うものがあるでしょうね。この映画ではその当たりがどう描かれているのか気になりました。
機会をみて観てみようと思います。

投稿: あさうづ | 2010年6月15日 (火) 07時20分

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